| 母性遺伝のミトコンドリアDNA(mtDNA) 通常、動物の場合、ミトコンドリアは100%母性遺伝します。例えば、ヒトの場合、父親と母親の間に出来た子供のミトコンドリアは、母親のミトコンドリアゲノムを100%受け継ぎ、父親のミトコンドリアゲノムは受け継がれません。ですから、ヒトの場合、女性の系統の祖先が解るというのが、ミトコンドリアDNA解析のおもしろいところです。 実際にアフリカ、ヨーロッパ、アジアの女性のミトコンドリアを採集して、その祖先を辿る研究が行われました。その結果、アフリカ人が最初に分岐するグループであることがわかりました。さらに、その祖先は約17万年前に生きていたアフリカの一人の女性に行き当たり、これをミトコンドリア・イブと呼びます。世界中の人類の母が特定できたわけです。これが母性遺伝の性質を利用して、現代人のルーツを探れることを最初に示した研究です。ただ、このミトコンドリア・イブは、1991年当時の研究結果であり、現在は、人骨化石からDNAを抽出する技術がさらに発展しているので、新たな人骨化石の発見に伴い、ミトコンドリア・イブ説の系統が変わる可能性はあります。 そもそもどうして、ミトコンドリアは母性遺伝をするのか?この現象は、精子と卵の受精の過程に由来します。精子は、頭部に核を持ち、胴体部分(中片と呼びます)にミトコンドリアを持ちます。そして尾部が鞭毛です。これが受精時には、精子の頭部内に存在する核とミトコンドリアが卵細胞に進入します。精子由来の核は、卵由来の核と融合します。ところが、精子由来のミトコンドリは、卵細胞の分解酵素によって分解されてしまいます。その結果、受精した後の卵細胞には卵由来のミトコンドリアのみが残るわけです。 最近の研究で、その分解には、ユビキチンとプロテアソームが関与することが明らかになりました。ただし、すべての生物のミトコンドリアが母性遺伝するとは限らず、異種間の交雑ではミトコンドリアが、父性遺伝する生物種もあることが報告されております。このメカニズムは、実際のところよく分かっていない部分もあり、今後の研究成果が期待されます。 |
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